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CoreAudio その3〜5改 AudioObjectでのプロパティ取得・設定

Mac OS X 10.6 Snow Leopardから、AudioHardware〜とかAudioDevice〜とかAudioStream〜とかのGet・Set系がことごとくDEPRECATEDになってしまいました。

僕の認識では、もともとAudioObject〜があって、そのコンビニエンスメソッドとしてAudioDeviceとかの関数があると思っていたのですけど、どうやら歴史的には逆だったようです。ヘッダをよく見てみたら、AudioObject系はわりと最近の10.4から増えてたんですね。

あと、AudioUnitがiPhoneと同じようにAudioComponentにいきなり変わっててびっくりしました。iPhoneで慣れ親しんでいたとはいえ、もちょっと緩やかに移行してくれてもいいんじゃないかなと思います。

プロパティの定数系も結構Deprecatedしてます。これはXcodeで警告を出してくれないので注意が必要です。ヘッダのコメントに”Some Day Be Deprecated”なんてこっそりかかれてます。Device系だとkAudioDevicePropertyDeviceNameから始まるところですね。10.7になっていきなりエラー出まくりなんて事のないようにしっかりチェックしておきましょう。

ということで、取得・設定系をAudioObjectを使ってやってみたいと思います。

AudioObjectでオーディオ情報の取得・設定をするにはAudioObjectGetPropertyDataやAudioObjectSetPropertyDataという関数を使います。これはいままでAudioHardware〜やAudioDevice〜など別々の関数でやっていたオーディオ情報の取得や設定を、ひとつでまかなえるものです。プロパティのサイズを調べるのにも、AudioObjectGetPropertyDataSizeという関数で行う事になります。

たとえば、プロパティの取得する関数はこんな感じで定義されています。

extern OSStatus
AudioObjectGetPropertyData(AudioObjectID inObjectID,
                           const AudioObjectPropertyAddress* inAddress,
                           UInt32 inQualifierDataSize,
                           const void* inQualifierData,
                           UInt32* ioDataSize,
                           void* outData)

最初のAudioObjectIDというのはAudioDeviceIDやAudioStreamIDをそのまま渡します。前の記事のその3でも説明しましたが、AudioDeviceIDもAudioStreamIDもAudioObjectIDをtypedefしているだけのもので、つまり全てAudioObjectIDです(リファレンス的にAudioDeviceなどはAudioObjectのサブクラスってことらしい)。AudioHardware〜系の関数をつかっていたプロパティのときはkAudioObjectSystemObjectを渡します。

ちょっとひとつ飛ばしまして、inQualifierDataSizeとinQualifierDataは、サンプルで使っているものが無かったのでよくわかりません。基本0とNULLで大丈夫なようです。もしかしたらまだ機能していないかもしれません。ioDataSizeとoutDataは取得するプロパティのサイズと受け取るメモリ領域で、前と同じです。

戻ってAudioObjectPropertyAddressは、

struct  AudioObjectPropertyAddress
{
    AudioObjectPropertySelector mSelector;
    AudioObjectPropertyScope    mScope;
    AudioObjectPropertyElement  mElement;
};
typedef struct AudioObjectPropertyAddress   AudioObjectPropertyAddress;

と定義されてます。デバイスとかストリームとか関係なくプロパティを特定するのに必要な情報ですね。

Selectorは〜PropertyIDの事です。Scopeは、ほとんどの場合はkAudioObjectPropertyScopeGlobalで、Deviceなどの入出力部分のときはInputとかOutputで指定したりします。Elementは基本kAudioObjectPropertyElementMaster(= 0)でOKだと思います(これ以外指定するパターンがすぐに見つけられませんでした。Channel的なところで0以外を使うのではないかと思います)。

最後に、サンプルソースです。Xcodeで新規プロジェクト→Command Line Tool→Foundationでプロジェクトを作成して、CoreAudio.Frameworkを追加して、main.mを以下のソースに差し替えてください。走らせると、デフォルトになっているオーディオデバイスの名前を表示して、サンプルレートを設定可能な中で変更します。

#import <Foundation/Foundation.h>
#import <CoreAudio/CoreAudio.h>
int main (int argc, const char * argv[]) {
    
    AudioDeviceID devID;
    UInt32 size;
    AudioObjectPropertyAddress address;
    AudioValueRange *sampleRates;
    CFStringRef deviceName = NULL;
    //デフォルトのアウトプットに設定されているオーディオデバイスを取得する
    address.mSelector = kAudioHardwarePropertyDefaultOutputDevice;
    address.mScope = kAudioObjectPropertyScopeGlobal;
    address.mElement = kAudioObjectPropertyElementMaster;
    size = sizeof(devID);
    
    AudioObjectGetPropertyData(kAudioObjectSystemObject, &address, 0, NULL, &size, &devID);
    
    //アウトプットの名前を取得する
    address.mSelector = kAudioObjectPropertyName;
    size = sizeof(deviceName);
    
    AudioObjectGetPropertyData(devID, &address, 0, NULL, &size, &deviceName);
    
    //アウトプットのデバイスが対応しているサンプルレートを取得する
    address.mSelector = kAudioDevicePropertyAvailableNominalSampleRates;
    AudioObjectGetPropertyDataSize(devID, &address, 0, NULL, &size);
    
    UInt32 numOfSampleRates = size / sizeof(AudioValueRange);
    sampleRates = calloc(numOfSampleRates, sizeof(AudioValueRange));
    
    AudioObjectGetPropertyData(devID, &address, 0, NULL, &size, sampleRates);
    
    //現在のサンプルレートを取得する
    Float64 currentSampleRate;
    address.mSelector = kAudioDevicePropertyNominalSampleRate;
    size = sizeof(Float64);
    
    AudioObjectGetPropertyData(devID, &address, 0, NULL, &size, ¤tSampleRate);
    
    //サンプルレートを別のにする
    int currentIndex = 0;
    for (int i = 0; i < numOfSampleRates; i++) {
        if (sampleRates[i].mMinimum == currentSampleRate) {
            currentIndex = i;
            break;
        }
    }
    
    int newIndex = currentIndex + 1;
    if (newIndex >= numOfSampleRates) newIndex = 0;
    
    //サンプルレートを設定する
    Float64 newSampleRate = sampleRates[newIndex].mMinimum;
    size = sizeof(Float64);
    
    AudioObjectSetPropertyData(devID, &address, 0, NULL, size, &newSampleRate);
    
    NSLog(@"device name = %@", deviceName);
    NSLog(@"new samplerate = %f", newSampleRate);
    
    free(sampleRates);
    CFRelease(deviceName);
    
    return 0;
}

Grand Central Dispatch その4 group

前回紹介したdispatch_applyはブロックの処理が終わるまで待ってくれていましたが、dispatch_asyncは別スレッドで処理されてしまうので、どの順番で処理されるのかも分からない状態でブロックを処理させっぱなしになってしまいます。

グループというのを使えば、asyncで処理する複数のブロックをひとつのグループにまとめて、それらのブロック全部が終わったタイミングを受け取る事が出来ます。

まず、グループを作る関数がこれです。

dispatch_group_t dispatch_group_create(void);

次に、グループで処理させたいブロックを渡すのがdispatch_group_asyncです。グループはasyncオンリーでsyncはありません。

void
dispatch_group_async(dispatch_group_t group,
dispatch_queue_t queue,
dispatch_block_t block);

そして、グループの処理全部が終わったら呼ばれるブロックを設定するのがdispatch_group_notifyです。基本的に、グループ内共通で使ったメモリ領域などを解放するのに使うようです。どこかに通知するのにも使えると思います。

void
dispatch_group_notify(dispatch_group_t group,
dispatch_queue_t queue,
dispatch_block_t block);

カレントスレッドで処理の終わりを待つ必要があれば、待たせることもできます。dispatch_group_waitです。どれだけ待つのかを指定できます。DISPATCH_TIME_FOREVERという定数をtimeoutに渡せば、いつまでも待ちます。

long
dispatch_group_wait(dispatch_group_t group, dispatch_time_t timeout);

なお、waitで待っても待たなくても、notifyで設定したブロックが呼ばれるのは別スレッドのようです。

サンプルソースです。

#include <stdio.h>
#include <dispatch/dispatch.h>
int main (int argc, const char * argv[]) {
    
    dispatch_queue_t queue = dispatch_get_global_queue(DISPATCH_QUEUE_PRIORITY_DEFAULT, 0);
    dispatch_group_t group = dispatch_group_create();
    
    __block int sum = 0;
    
    for (int i = 0; i < 10; i++) {
        dispatch_group_async(group, queue, ^{
            printf("+%d\n", i);
            sum += i;
        });
    }
    
    dispatch_group_notify(group, queue, ^{
        printf("finish");
        //<strike>dispatch_release(group);</strike>
    });
    
    dispatch_group_wait(group, DISPATCH_TIME_FOREVER);
    
    printf("sum = %d\n", sum);
    dispatch_release(group);
    
    return 0;
}

前回のapplyと同じような処理をさせています。waitが無ければ、おそらくsumは0で終わってしまうと思いますが、waitで待っている事でちゃんと45と答えが出ます。

waitの代わりにdispatch_main()にしておいてnotifyのブロックの中でsumを見れば、そこでも45となっていて、ちゃんとasyncで渡したブロックが全て実行された後に呼ばれる事が分かると思います。

ちなみに、notifyのブロックが呼ばれる前にasyncで新たなブロックを同じグループに入れると、その新しいブロックも終わってからnotifyのブロックが呼ばれます。が、、notifyのタイミングが新たなブロックの前か後かどちらでくるか分からなくなってしまうので、やらない方が良いと思います。

Grand Central Dispatch その3 apply

前回のコードのように同じ処理をforループでキューに渡すようなとき、それ専用の関数がディスパッチには既に用意されています。dispatch_applyです。

void
dispatch_apply(size_t iterations, dispatch_queue_t queue, void (^block)(size_t));

iterationsの数だけブロックをキューに渡して処理させます。ブロックはsize_tの引数を一つだけ持ち、よくあるforループと同じように0から1ずつ増やした値が渡されます。

まずは、サンプルコードです。

#include <stdio.h>
#include <dispatch/dispatch.h>
int main (int argc, const char * argv[]) {
    
    dispatch_queue_t queue = dispatch_get_global_queue(DISPATCH_QUEUE_PRIORITY_DEFAULT, 0);
    
    __block int sum = 0;
    
    dispatch_apply(10, queue, ^(size_t i){
        sum += i;
    });
    
    printf("sum = %d\n", sum); // sumは45になる
    
    return 0;
}

これを実行すると、0から9までがsumに足されて45になります。

dispatch_applyはグローバルキューに渡していても、ちゃんと全てのブロックが処理されるのを待ちますので、dispatch_main()が無くてもアプリが終了する前に全て足された答えが出ます。ですが、sync的に順番に処理されている訳ではなく、並列に処理はされています。ただ、asyncと同じという訳でもなく、applyでは、呼び出したスレッドと別スレッドを組み合わせて並列にブロックが実行されているようです(asyncは別スレッドだけ)。

ブロックの途中でスリープさせたりとかして試してみると、applyでは同時に2つまでしか処理されません(試したのがMacBook Airでコアが2つだから?)。asyncだといくらでも同時に実行されてしまいます。このあたりは、使い道の違いって感じですかね。

Grand Central Dispatch その2 Queue

Queueを作る

ディスパッチの基本的な使い方は、処理したいコードをブロックや関数で用意しておいて、キューにそのブロックや関数を渡すという流れになります。

ディスパッチのキューには2種類あります。アプリ(OS?)に最初から一つ用意されているグローバルキューと、自分で作るキューです。グローバルキューは並列に処理できますが、自分で作るキュー(以後シリアルキューと書いて区別します)は入れていった順番に直列でしか処理できません。

キューはdispatch_queue_tという型のオブジェクトで表されます。ディスパッチのオブジェクトは他にもいくつかありますが、それは次回以降に後回しにします。

グローバルキューを取得するにはこの関数を使います。

dispatch_queue_t
dispatch_get_global_queue(long priority, unsigned long flags);

一つ目の引数にはキューが処理される優先度を指定します。普通はDISPATCH_QUEUE_PRIORITY_DEFAULTを指定すれば良いと思います。DEFAULT以外にもHIGHとLOWがあります。HIGHの処理が全て終わってからDEFAULT、DEFAULTが全て終わってからLOWという順番で処理されていくようです。2つ目の引数はヘッダを見るとReserved for future useとなっていて今は何も意味しないので、0を入れておけば良いです。

シリアルキューはこの関数で作ります。

dispatch_queue_t
dispatch_queue_create(const char *label, dispatch_queue_attr_t attr);

一つ目の引数はキューに付けられるラベルで、サンプルを見る限り逆DNS記法が推奨されているようです。でも、同じラベルでふたつキューを作っても、同じキューが返されるという事は無く、別のキューが作られるようです。2つ目の引数はこれまたヘッダにUnusedなんて書かれていて、こちらはNULLでも入れておけば良いようです。

なお、Carbonに慣れ親しんでいる方はお分かりかと思いますが、関数名にcreateとついているのでdispatch_queue_createで作ったキューは使い終わったら解放しなければいけません。それを行うのはdispatch_releaseです。

dispatch_release(queue);

使うかどうか分かりませんが、リテインカウントをあげる事も出来ます。

dispatch_retain(queue);

これらretainとreleaseはキュー以外のオブジェクトにも使います。

Queueに処理を渡す

キューを取得できたら、ブロックを渡して処理をさせます。キューを使って処理を開始させる関数はいろいろありますが、まず基本的な2つを見てみます。こんなかんじで定義されています。

void
dispatch_async(dispatch_queue_t queue, dispatch_block_t block);
void
dispatch_sync(dispatch_queue_t queue, dispatch_block_t block);

ayncは非同期でバラバラに、syncは同期で順番に、キューにブロックを処理をさせようとする関数です。と説明すると、キューにも同じような用途で2種類あるのに何で関数がまた同じように2種類分かれているんだと思ってしまうのですが、ちょっと役割が違います。

ブロックが処理されるスレッドを調べてみると、asyncは呼び出し元のスレッドとは別のスレッドでブロックを処理させ、syncは呼び出し元と同じスレッドで処理をさせるようです。

実際の挙動としては、グローバルキューにasyncでブロックを渡すと別スレッドで並列に実行されますが、syncで渡すと現在のスレッドをつかうのでそのまま直列に実行されます。シリアルキューにsyncで渡せばもちろんそのまま直列に実行ですが、asyncで渡すと入れていった順番に別スレッドで実行されます。

グローバルキュー+syncの組み合わせはありえないような気がするんですが、もしかしたら想像もつかない用途があるかもしれません。他にもディスパッチ用の関数はたくさんあるんで意味が無さそうな組み合わせはいろいろ出てくるかもしれません。

それと、ここでつかえるブロックは返り値も引数もなしのブロックです。

実行してみる

実際にディスパッチを使ってみます。ディスパッチを使うには<dispatch/dispatch.h>をincludeしないといけないのですが、Objective-Cで使う場合はFoundationに既に含まれているので何も気にしなくても使えます。

以下、サンプルのソースコードです。単純にディスパッチを試すためC言語だけで組んであります。新規プロジェクトをCommand Line ToolのTypeをCで作成して、main.cを以下のコードに差し替えてください。あっ、もちろんSnow LeopardのXcode3.2以降で実行してください。

#include <stdio.h>
#include <stdlib.h>
#include <dispatch/dispatch.h>
int main (int argc, const char * argv[]) {
    
    dispatch_queue_t gQueue = dispatch_get_global_queue(DISPATCH_QUEUE_PRIORITY_DEFAULT, 0);
    
    dispatch_async(gQueue, ^{
        
        dispatch_queue_t sQueue = dispatch_queue_create("jp.objective-audio.sample1", NULL);
        
        for (int i = 0; i < 10; i++) {
            dispatch_sync(sQueue, ^{
                printf("block %d\n", i);
            });
        }
        
        dispatch_release(sQueue);
        
        printf("finish\n");
        exit(0);
    });
    
    dispatch_main();
    
    return 0;
}

dispatch_asyncで非同期で実行するブロックの中でシリアルキューを作って、10回ほどdispatch_syncでブロックを実行させています。その処理が終わったら”finish”と表示してアプリ終了です。

ブロックの記述は、わざわざ宣言とかしなくても、こんなかんじで関数の中に直接書けちゃいます。

最後のdispatch_main()というのはメインスレッドを休止させるもので、これを使わないとdispatch_asyncでグローバルキューにブロックを実行させる前にアプリがreturn 0で終了してしまいます。NSApplicationMain()かCFRunLoopRun()が走っている場合には必要ありません、というかdispatch_main()を呼び出すと固まります。

キューの種類を入れ替えてみたり、syncとasyncを入れ替えてみたりすると、どんな感じで動作するか分かるかと思います。asyncのところをsyncにするとdispatch_main()が無くてもちゃんと全部実行されますし。逆にsyncのところをasyncにすると、ブロックの処理が別スレッドに行ってしまうので、実行される前に”finish”となります。

とりあえず今回は以上です。asyncやsync以外にもディスパッチでブロックを実行させる関数があるので、また次回見ていきます。

Grand Central Dispatch その1 Block

Grand Central Dispatchについて日本語で丁寧に詳しく説明してくれるサイトはないかなぁと待っていたのですが、待っている間にひととおり自分なりに調べ終えてしまったので、まとめて書いておきます。まちがいに気がついたらご指摘いただけるとうれしいです。

Grand Central Dispatch(以下ディスパッチと書きます。リファレンスとか関数名とかGrand Centralって全然ついていなくてDispatchだけですし。)とはなんぞやというと、Snow Leopardから導入された並列処理のAPIです。並列処理といえばLeopardではNSOperationというObjective-CのAPIが導入されましたが、ディスパッチはC言語のAPIとして用意されていて、システムに近い低レベルなところで使えるものです。

あれこれ試した印象で言うと、コアが2つしかないCPUのMacでたいした事の無い処理をなんでもかんでもディスパッチで並列にしても、ディスパッチのオーバーヘッドが大きくて逆に遅くなってしまうので、どこで使うかってのはよく考えた方が良さそうです。Mac Proみたいにコアがたくさんあると効果が大きいんだろうなぁと思います。

Blockの構文

ディスパッチでは一つ一つの処理をブロックという単位でキューに渡して処理を実行します。ブロックの代わりに関数を使う事も出来るのですが、あえてこのタイミングでC言語を拡張して用意しているくらいですので、ブロックを使うというのが正当な使い方だと思います。

ブロックは変数に入れておく事ができ、ブロック名をname1とname2とすると宣言はこうなります。

void (^name1)(void); //返り値なし、引数なし
int (^name2)(float, int); //返り値int、引数floatとint

名前の頭にキャレット(^)を付けます。で、これらへ代入をするのはこうなります。

name1 = ^{
    //ブロックの処理を記述
};
name2 = ^(float f, int i) {
    //ブロックの処理を記述
    return (int)f + i;
};

ブロック本体は、キャレット(^)、引数、その後にブレース({})で囲んで記述します。name1のように引数がvoidなら省略できます。なお、name2のように返り値があったり、引数が2つ以上のブロックはディスパッチでは使いません。

ブロックは関数と違って、メソッドや関数の中に置けます。関数のような感じで外にも置けます。

呼び出す時は関数と一緒です。

name1();
name2(3.0, 5); //返りは8

ブロック変数

ディスパッチでブロックを使うときには返り値が無いとなると、処理結果を得るためにはどうするかって事なんですが、そのひとつにブロック変数というのがあります。たとえば、以下のようなコード。

#import <Foundation/Foundation.h>
int y = 0;
int main (int argc, const char * argv[]) {
    
    int x = 0;
    
    void (^inc)(void) = ^{
        x++; //エラー
        y++;
    };
    
    inc();
    
    printf("x = %d / y = %d\n", x, y);
    
    return 0;
}

これはx++のところでエラーが出てコンパイルが通りません。

ブロック内では、グローバル変数には自由にアクセスできますが、関数内のブロック外にあるローカル変数は、そのままでは読み込めるだけで書き込みは出来ません。ディスパッチでブロックを処理するときには、呼び出した関数とは別のスレッドで処理される場合があるので(というかそれがディスパッチを使う目的)、関数が終わったら消えてしまうローカル変数には戻せないという事だと思います。

ローカル変数に書き込むには__blockという修飾子をつけます。こうすることで、その変数が使われるブロックがすべて終わるまで保持されるようです。

#import <Foundation/Foundation.h>
int y = 0;
int main (int argc, const char * argv[]) {
    
    __block int x = 0;
    
    void (^inc)(void) = ^{
        x++;
        y++;
    };
    
    inc();
    
    printf("x = %d / y = %d\n", x, y); // x = 1、y = 1
    
    return 0;
}

とりあえずブロックはこんなところで、次回は実際にディスパッチを使ってみます。